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MOTHER Archive

'09 03月02日 (月) 19時25分 : MOTHER読解:MOTHER:フライングマンの名前の由来

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mother読解シリーズ、今回は初代motherから、プレイした人なら誰でも心を掴まれる「フライングマン」について、その意味合いを読み解くと共に、最後には「なぜフライングマンは、フライングマンという名前なのか?」について大胆な仮説を1つ立ててみようと思います。

以下、motherの重大なネタバレを含みます。

フライングマンを巡る冒険

フライングマンは、主人公の曾祖母のマリアが生み出した心の国・マジカントに最果てにポツンと立つ小屋の中に5人兄弟仲良く暮らしている鳥のようなくちばしと翼を持つ人で、主人公が話しかけるとこんな事を言って仲間になってくれます。

「私はフライングマン。あなたの力になる。そのために生まれてきた」

しかし、ゲーム中ではフライングマンの体力を回復する術が無く、主人公が手をこまねいている間に死んでしまうという不条理なキャラクターとして描かれます。ゲームの攻略本の中でも異色の出来を誇る「マザー百科」の中で、いとうせいこうはフライングマンについてこう述べています。

なにしろ勝手について来ちゃう。で、当然的に叩かれるわけですけど、守ってやれないんですね。生命値も回復してあげられない。ただただ、私のために尽くし、そして死んでゆく。申し訳ないったらないんですよ。
でもね、ここで重要なのは、申し訳ないと思いながらも、そのフライングマンにイラ立ちを感じる自分がいること。「この野郎、勝手に死を押しつけやがって」と唾を吐く自分がいることなんです。
これは微妙にして奥の深い感情ですよね。特にフライングマンの死に正直ホッとした後で、彼の墓を発見した時なんてたまらない。「あんな風にホッとしてしまったオレという人間は・・・」とまあ、しばし心のダンジョンをさまよってしまうわけです。しかも、さらにしつこいようですが、ここで重要なのは心のダンジョンで反省しているはずの自分が、どこかでまた「勝手に死んでおいて、そういうプレッシャーをかける気か!」と思ってしまうこと。やれきれないですよ、これは。
(中略)
でもね、ゲームが終わった時、すべてをうっちゃり切った爽快感があるはずですよ。つまり、このゲームは子供なら心のダンジョンに出会い、大人ならダンジョンを抜け出るという仕組みになってるんです。往還ですよ。行きか帰りかはゲーマー次第。

名文だと思います。いとうせいこうが言うような「心のダンジョン」に出会い、もしくは抜けていくという冒険を、プレイヤーはフライングマンの精悍な死と共に始めることになるのです。子供にとってはイニシエーション(通過儀礼)として、大人にとってはピルグリメイジ(巡礼)として、MOTHERにおける冒険は全編に渡って「プレイヤーが自らの心と語り合う」きっかけに満ちています。

フライングマンの物語的意味

このように、フライングマンは非常に魅力的であり、他のゲームが達成できていない「プレイヤー自身の中の感情を掘り起こす」事を実現しているように思います。そんな心のスコップとでも言うべきキャラクターのひとつとしてフライングマンは存在していますが、一方で、フライングマンはシナリオ上でどのような意味を持つのか? という点についても、面白い考察ができるように思います。

主人公がフライングマンと会う前後のシナリオを参照します。

  1. 主人公が、洞窟の奥にある謎のモニュメントの前で曾祖父の日記を読むと、なぜかマジカントにいざなわれる。(この時点で、マジカントの本性について主人公は知らない)
  2. マジカントの女王・クイーンマリーに会う。
  3. フライングマンに会い、冒険を共にしながら、地下水脈を辿る。
  4. 地下水脈の最後、「わすれられたおとこ」を見捨てることで、出口を見つけ、現実世界へと戻る。
  5. 現実世界の街・サンクスギビングで、はじめての仲間・ロイドと出会う。

マジカントは、繰り返しになりますが、主人公の曾祖母・マリアの心の世界であり、敵は出るものの回復もタダで、ピンク色の雲の世界全体が母性に包まれているようです。そこで、主人公は下記の正反対の人物に出会います。

  1. フライングマン:勝手に主人公に尽くし、助けてやれずに死んでしまう。
  2. わすれられたおとこ:世間から隔絶された孤独を好み、無視することで道を開く。

あまりにもコミュニケーションが下手なキャラクターが相次いで登場している点が非常に重要です。この2つの両極端なキャラクターには、どうやら意味がありそうに思われます。結論から先に言うと、これら2つのキャラクターは「はじめての仲間・ロイドと一緒に冒険をしていくための、コミュニケーションの練習台」という意味合いがあるように思われるんです。

曾祖母の母性の庇護の元で、主人公はコミュニケーションの練習をする

フライングマンは勝手に主人公の仲間になるだけで、直接的に主人公に実害を被らせることはありません。墓という形で心に切なさを残しこそすれ、体力を削ったりお金を奪ったりということは無いわけです。これは「わすれられたおとこ」も同じで、誤ったコミュニケーションをすると地下水脈の入り口まで戻されたりはするものの、特段悪さをするわけではありません。

つまり・・・すべては、曾祖母の母性の世界・マジカントの中において、主人公は守られている状況の中でのコミュニケーションだと解釈することが出来ます。両極端な2つのキャラクターは、主人公に「共に冒険すること・コミュニケーションをすること」を教えるように、勝手についてきては悲しい思いをさせたり、敢えて目の前の人を無視するという心が冷たくなるような事をさせていると考えられるわけです。そして、それら2つの試練をクリアした段階で、主人公はやっとロイドと出会うことが出来るわけです。

フライングマンと「わすれられたおとこ」は、主人公がコミュニケーションという「世界との接し方」を母性に守られながら練習するための、練習台だと言えるでしょう。

フライングマンの名前の由来・仮説

ここまでにおいて、フライングマンは主人公にコミュニケーションを練習させるための極端な性格を持つキャラクターであることを論じました。では、具体的にフライングマンはどんな性質を持っているかを見てみることから、なぜこのキャラクターが「フライングマン」という名前を与えられたかについての仮説を述べたいと思います。

下記に、フライングマンの性質をまとめてみます。

  • 主人公の都合に関わらず、「そのために生まれてきた」と言いながら、勝手についてくる。
  • 戦いに荷担してくれるが、体力を回復させられず、先に死なれてしまう。
  • 死ぬと墓が建ち、「主人公の血と肉」「主人公の大いなる悲しみ」「主人公の善なる心」「主人公の内なる力」「主人公の永遠のしもべ」という墓碑が刻まれている。

こうやって見てみると、プレイヤーの気持ちを無視して勝手にテンションを上げ、ついてきては死に、墓碑までプレイヤーのテンションを逆に下げてしまうぐらいに真面目で主人公想い。勝手に先んじて、前のめりに死んでいく。「先んじて、前のめりに」

ここでフライングマンの名前の由来についてひとつ仮説を述べたと思います。

仮説:フライングマンの名前は、適切なタイミングよりも先んじて前のめりに事を行ってしまうことを示す動詞「フライングする」を由来としている。

姿形が鳥のようなので「飛ぶ」からフライングマンという名前になったのかと当初は思っていたのですが、実は逆で、急ぎがちで前のめりな性格から「フライングマン」と名前がつき、名前から容姿が後付けで決められたと考えると、面白いと思うんです。

ついついフライングしてしまう急ぎがちで前のめりな人とのコミュニケーションを事前に練習しておくことにより、加えて「俺を無視しろよ」と唾を吐く男の言う通り無視するというコミュニケーションを練習しておくことにより、主人公はいじめられてバケツに閉じこもる未来の仲間・ロイドに対して適切に好意を伝えることができた。・・・そう考えると、フライングマンの死や「わすれられたおとこ」を無視したことは決して徒労ではなかったと言えるのではないでしょうか。そして、それがすべてマジカント=曾祖母の母性の庇護の元で行われていることが、主人公が守られながらも冒険をしていることを暗示すると共に、プレイヤーに心のダンジョンの往還をさせる必要条件ではないのかと、僕は思います。

なお、mother2でのフライングマンは、主人公自身の心の世界と性格を変えたマジカントに登場しますが、ここでは「コミュニケーションの練習」という要素は薄れ、主人公やプレイヤーの心を代弁するような墓碑になっています。一見すると乱暴な墓碑に見えますが、母性の庇護ではなく、主人公(プレイヤー)の心の動きをそのまま捉えた墓碑だと思いながら見ると、切なく響きます。逆に言えば、mother2のフライングマンの墓碑は、「この墓碑は自分の心を如実に現している!」と気付けなければ、ただの冷徹な言葉に見えてしまうかもしれません。

  1. (フライングマンの墓) ここに眠るはネスの勇気。よく戦い、傷つき倒れた。
  2. (フライングマン2の墓) ここに眠るはさらなるネスの勇気。邪悪なものに大きな打撃を与え、ついに倒れた。
  3. (フライングマン3の墓) ここに眠るは...忙しくて、墓に文字を刻むひまもなかった。
  4. (帰ってきたフライングマンの墓) 誰かの墓。
  5. (最後のフライングマンの墓) はか。

※上記の議論中で、Mother's Clubさんのデータを利用させていただきました。

'09 02月14日 (土) 21時30分 : MOTHER読解:MOTHER2:プーは何故いるのか

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任天堂のRPG「MOTHER」シリーズを読解する連載2回目は、MOTHER2から。

初代MOTHERでは、主人公の少年と、もう1人の少年と少女の3人で世界を救います。途中で不良のお兄さんが仲間になりますが、それは一時的なもので、最終的には3人です。また、3人+1人はすべてアメリカっぽい世界観の中の人物として、世界観に沿う描写となっています。

一方でMOTHER2では、3人の少年少女は一緒ですが、その3人に加え「東洋の王族の出で、少林寺のような拳法着をまとった、無口な弁髪の少年」が仲間となります。名前は、よりにもよって「プー」。明らかに初代MOTHERの世界観から逸脱し、MOTHERの世界観にハマッていたプレイヤーを突き放すような、違和感を覚えさせるような存在として意図して描かれているように思えます。プレイした当時の僕も、「なんでMOTHERの世界にこんな奴がいるんだ!?」と奇妙に思ったことを憶えています。

そこで、今回議論するテーマはこちらです。「プーは何故いるのか?」。プーが象徴する役割と、主人公ネスが背負った運命を読み解きます。

以下、MOTHERシリーズのネタバレを含みます。

初代MOTHERにおける主人公の役割

プーの意味について読み解く前に、まずは初代MOTHERのシナリオを見ていきます。非常にザックリとまとめると、時系列でこんな事が起きる物語でした。

  1. 主人公の曾祖父夫妻が、侵略者の宇宙人に連れ去られる。
  2. さらわれた曾祖母は宇宙人の子供を育てることとなり、宇宙人から母のように慕われるが、そのまま帰ってくることはなかった。
  3. 一方、曾祖父は宇宙人の監禁を逃れ脱出し、宇宙人と曾祖母につながる秘密の言葉を残し、志半ばにして死ぬ。
  4. 時は移り、主人公の少年は、ある日ポルターガイスト現象に見舞われた事をきっかけに冒険に出る。
  5. 冒険の途中、世界にちらばるメロディを集めてると同時に、曾祖父が残した言葉によって開いた不思議な世界「マジカント」を訪れ、その世界の人々の手助けを借りながら冒険を続ける。
  6. メロディが揃った時、主人公はマジカントの女王マリアが曾祖母であったことを知る。マジカントは、曾祖母が作った心の世界であり、そのことを理解した曾祖母はマジカントごと消える。
  7. 宇宙人と対峙した主人公は、正体のつかめない攻撃にくじけそうになるが、冒険で集めた8つのメロディ=曾祖母が歌っていた子守歌を歌うことにより、宇宙人を撤退させることに成功する。
  8. 世界が救われる。

上記が大枠におけるMOTHERのシナリオです。読んでいただければ分かるように、初代MOTHERは「曾祖父夫妻と宇宙人間の関係」が主軸になっていて、さらに言えば「曾祖母が宇宙人に注いだ愛や慈しみ」が世界を支配している最大の原則であると言えます。主人公は曾祖母の記憶を戻し、その愛が結晶したメロディをもって、世界を救うことが初めて可能になったわけですね。

煎じ詰めれば、「主人公は世界を救うための代理人」でしかないと言えます。主人公と宇宙人との間の因縁を作ったのも、その因縁によって危機に陥った世界を救ったのも、最終的には「曾祖母の愛」ということになるでしょう。だからこそ、タイトルもMOTHERとなるわけです。

MOTHER2は「主人公が世界を救う」

さて、前提として「MOTHERは曾祖母の愛が世界を救う」という点を理解した上で、いよいよMOTHER2へと進んでいきます。

以前採り上げた『MOTHER2「ぼくだけのばしょ」の意味』では、MOTHER2における8つのメロディが、主人公の少年が「コドモからオトナへ」の成長を示していることを論じました。初代MOTHERでは、8つのメロディは曾祖母の子守歌でしたが、MOTHER2におけるメロディは主人公の内面と非常に強い関わりを持っているようです。

では、MOTHER2のあらすじを追っていきましょう。

  1. ある日、主人公の家のそばに隕石が落ちる。その中から出てきた人物は「宇宙人の侵略によって間もなく世界が崩壊する未来から、世界を救う少年にその指名を伝えるためにやってきた」と主人公に告げる。
  2. その人物は不遇の死を遂げるが、主人公は世界を救うために冒険を始めることとなった。
  3. 世界を冒険しながら、主人公は8つのメロディを集めることとなる。そのメロディを集めた瞬間、主人公は気を失い、自分が生まれた時に両親から愛された記憶の幻を見た後、いつの間にか丸裸でマジカントという場所にいる。
  4. マジカントは主人公の心の中の世界だった。その世界の中心である「エデンの海」で、自らの心の中の悪魔を打ち倒した時、一瞬だけ宇宙の真理に触れる。
  5. 秘められた力を解放した主人公は、時空を遡って宇宙人と対峙する。正体のつかめない攻撃にくじけそうになるが、仲間の少女ポーラの「いのる」によって宇宙人にダメージを与えることに成功する。
  6. ポーラの祈りはやがてプレイヤー自身にも届き、プレイヤーの想いにより宇宙人に致命的なダメージを与え、撃退に成功する。
  7. 世界は救われる。

ポーラの祈りがきっかけになっている辺りが「MOTHER」らしいんですが、なんと最終的にはプレイヤーが世界を救うことになります。正確に言うと、「プレイヤーと、MOTHER2の世界の人たち全員」が世界を救うわけですね。そんな結末を実現するために、主人公はメロディを集め、コドモからオトナへと成長していく訳ですが、そんな冒険の中で最も重要になるのは、やはりマジカント。主人公の心の世界であるマジカントの中心には、主人公の心の中の悪しき部分があり、その先には宇宙の真理が渦巻いています。MOTHER2の世界においては、心の中に降りていくと、やがて宇宙全体が見つかることになっているようです。極めて仏教的というか、東洋的な哲学が世界観のベースに敷かれているようですね。

「東洋的」「哲学」・・・

そう、ここがポイントです。論を急がず、ここでMOTHER2における3人の仲間を分析してみましょう。

  • 少女ポーラ : 超能力が使える。幼稚園の娘。「いのる」が使える。
  • 少年ジェフ : 運動は苦手だが科学は得意な秀才。天才科学者を父に持つ。
  • 王子プー : 超能力が使える。「ム」の修行を終え、世界を救うため主人公と合流する。

主人公の冒険において、少女ポーラは「母性」を、少年ジェフは「仲間」を象徴しているように思えます。現に、ここまでの仲間で初代MOTHERは完結していました。では、最後の仲間・プーは何を象徴しているのか・・・? ここまで来れば、僕が何を言いたいのかは大分予想がついているとは思いますが、さらに別の視点から見てみます。プーが仲間になる前後のシナリオを追いかけてみましょう。

  1. 主人公たちがサマーズに到着。
  2. とある漁師の妻が妙なお店に入り浸っていると言う。この妻は、マジックケーキという食べ物の唯一の作り手であるというが、お店にハマッているおかげでマジックケーキは作っていない。
  3. 妙なお店は「クラブ・ストイック」。ステージに置いてある石を眺めつつ、水を飲みながら哲学するという妙な店。
  4. クラブ・ストイックに入り浸る漁師の妻は、マジックケーキを食べたいという主人公の願いを聞いて改心し、とびっきりのマジックケーキを作ってくれるという。
  5. マジックケーキを食べた主人公たちは意識を失い、夢を見る。その夢は、王子プーが旅立つ前の「ム」の修行の様子だった。
  6. 「ム」の修行を終えたプー王子は、現実の世界で主人公たちの前に現れ、仲間になる。

こうやって改めて見てみると、「哲学」が重要なキーになっていることが分かります。クラブ・ストイックは俗物的な意味での哲学を意味しているようで、そこから抜け出す事をきっかけに、「ム」の修行に挑むプーの世界へと物語は移り変わっていきます。

プーは「哲学」の象徴である

そう、プーは哲学の象徴として、物語に登場しています。母親の愛から離れることで冒険をスタートし、母親ではない別の母性としての少女ポーラを仲間に、主人公には出来ない事ができ、仲間として共に冒険をしていく少年ジェフを仲間にした後、主人公がオトナになるための次のステップとして、「哲学」が必要になるわけです。

哲学といっても、ここでの哲学とは「自分を見つめること」。自らを見つめ、「自分って何だろう?」という事を突き詰めていくのは、思春期なら大抵だれでもしている事ではないでしょうか。そんな成長を物語の作者である糸井重里は描こうとしているように思います。だからこそ、プーを仲間にした後のメロディは、以下の2つです。

  • ルミネホール:ヒカリゴケが主人公の心の中を文字にする洞窟
  • ファイアスプリング:激しく炎を吹き上げる小さな火山

ルミネホールはまさに自らの心を映し出す鏡として機能しています。また、ファイアスプリングを訪れ8つのメロディをすべて集めた主人公は、アイデンティティが確立されると同時に、心のエネルギーが溢れ、マジカントへと進むことになります。

このようにプーは、主人公がコドモからオトナになる直前の段階としての「自己の心を見つめる」という哲学的な側面を象徴した存在だと言うことができるでしょう。

なお、マジカントで主人公は「宇宙の真理」に触れることになりますが、王子プーは国の老師から「ほしを おとす ほうほう」を学ぶことになります。それは「PKスターストーム」という隕石を落として敵にダメージを与える超能力であり、冒険で大きな助けになるものなのですが、ここでも符合が見られます。

  • 主人公 : 心の奥底に、宇宙の真理を知る
  • プー : 「ム」の修行の末に、星を落とす方法を身につける

心の中に、宇宙がある。心の中に世界のすべてがある・・・という考え方は、表現を変えてMOTHER3で再登場します。MOTHER2では世界を救うことになるプレイヤーは、MOTHER3でさらにゲームと同一化していくことになるのですが・・・これはまた別の話ということにしようと思います。

'08 11月04日 (火) 08時20分 : MOTHER読解:MOTHER2「ぼくだけのばしょ」の意味

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いきなりの話ですが、今回からシリーズで「MOTHER読解」と銘打った記事をスタートさせたいと思います。先日の記事『批評って面白い? 〜「崖の上のポニョが神すぎる件」を巡って』にも書きましたが、僕は批評やら読解やらが大好きなので、完全な趣味の記事となってます(笑)

以下、MOTHERシリーズのネタバレを含みます。

「ぼくだけのばしょ」のモチーフを読解する

僕が大好きなゲームに、任天堂のMOTHERシリーズがあります。糸井重里が作ったRPGで、他のRPGとは一線を画した世界観が大好きで、僕が音楽や文章を書く趣味を持つきっかけになったソフトといっても過言ではありません。そんなMOTHERシリーズの中から、今日はMOTHER2の「ぼくだけのばしょ」をとりあげます。旅の中で、主人公の少年は世界に散らばる「ぼくだけのばしょ」を辿ることで精神的に成長していくのですが、その場所は下記の8カ所があります。

  1. ジャイアントステップ:謎の大きな足跡
  2. リリパットステップ:一列になり輪を描いた小さな足跡
  3. ミルキーウェル:小さな岩から牛乳のような白い水が湧き出る泉
  4. レイニーサークル:一角だけ静かに雨が降り続く場所
  5. マグネットヒル:都会の片隅にあるキラキラした磁石のモニュメント
  6. ピンククラウド:洞窟の先の崖から広がるピンク色の雲
  7. ルミネホール:ヒカリゴケが主人公の心の中を文字にする洞窟
  8. ファイアスプリング:激しく炎を吹き上げる小さな火山

MOTHER2が発売されたのは1994年、まだ子供だった僕には分かりませんでしたが、今になって改めてプレイしてみると、この8カ所の「ぼくだけのばしょ」に込められたメッセージが理解できるような気がします。あくまで僕個人の読解でしかありませんが、こんな意味があるのだと感じました。

  1. ジャイアントステップ:誕生。偉大な一歩を世界に記す
  2. リリパットステップ:ハイハイ・よちよちで動き回る赤ちゃん
  3. ミルキーウェル:母のおっぱい。無償の愛を受ける
  4. レイニーサークル:うまくいかない事やさみしさに涙を流す悲しい心
  5. マグネットヒル:世界に転がっている様々な不思議に惹かれる好奇心
  6. ピンククラウド:淡く沸き立つ恋心(注・洞窟の入口はウサギの石像に塞がれている=バニーガール?)
  7. ルミネホール:自分という存在を見つめる。アイデンティティの芽生え
  8. ファイアスプリング:自我の噴出とアイデンティティの確立

主人公は世界を救うために、自分という存在に気付き、確立し、真の意味で大人になるという成長の物語であるということが、「ぼくだけのばしょ」から読み解ける訳です。なお、これら8カ所を訪れた時に、主人公のネスは一瞬だけ幻を見ます。下記がそのリストですが、この幻からも上記の意味が深く汲み取ってもらえるかと思います。

  1. ジャイアントステップ:『ネスの目に一瞬白いむく犬の姿が見えた。』
  2. リリパットステップ:『ネスは赤い帽子をかぶった赤ちゃんの幻を見た。』
  3. ミルキーウェル:『ネスは遠くにママの声がしたように思った。思いやりのある強い子に・・・と聞こえた。』
  4. レイニーサークル:『ネスは一瞬、好きな献立の匂いを感じた。』
  5. マグネットヒル:『ネスの目に一瞬、ほ乳ビンが見えた。』
  6. ピンククラウド:『ネスは、若いママを見たような気がした。』
  7. ルミネホール:『ネスは、自分を抱いているパパの幻を見た。』
  8. ファイアスプリング:『ネスは幼い頃の自分に見つめられているような気がした。』

主人公はこの幻を通じて、少年がさらに小さかった頃の無意識の記憶を辿っていきます。少し年上のむく犬と共に成長したこと、ハイハイしたこと、母の愛。泣きじゃくる少年を、夕げの匂いが慰めたこと。キラキラして透明な瓶を掴んだ小さな自分の手、美しい母の姿、頼もしく自分を抱え守る父、そしてそんな家族の愛を受けて生まれた自分。幼い頃の自分がまなざしで訴えかけるのは、きっと「主人公が生まれて来た理由」なのでしょう。お前はこうして生まれたのだ、愛されるために生まれたのだ、それこそがお前が存在する理由なのだ・・・と、少年は理解したのかもしれません。そして「愛されること」を理解することで、少年はやがて「愛すること」を手に入れるのかも、しれません。

そうして8カ所の「ぼくだけのばしょ」を訪れた主人公は、自分の心の世界「マジカント」を冒険し、記憶と対話し、内なる悪魔を打ち倒した後に、一瞬だけ宇宙の真理に触れることになるのですが・・・この後はゲームでお楽しみください。

ゲームの外箱に、こんな言葉があります。

このゲームをプレイすると、こどもはおとなに、おとなはこどもに、なっていきます。

この言葉は、まさにMOTHER2というゲームが「こどもがおとなになる」物語から成り立っていることの証左でしょう。その道のりを丁寧に丁寧になぞっているからこそ、逆におとながプレイすると「あー、俺ってこんなだったな」という風に『おとなはこどもに』なる、という往還なわけで、だからこそ8つの「ぼくだけのばしょ」には上記のようなモチーフが与えられる事になったのだと思います。いやはや、よく出来たゲームです。

ちなみに、この記事を書くきっかけにもなった動画がニコニコ動画にあります。MOTHERシリーズは楽曲の良さにも定評があり、その中からの極上のチョイスをアレンジメドレーで聴かせてくれる素晴らしい動画です。

今後のラインナップ

さて、今後も折に触れて「MOTHER読解」を公開しようと思っていて、今後予定されているラインナップはこちらになっております。

  • MOTHER:恋に気付く方法 〜アナとピッピの居場所
  • MOTHER:母という心性、マジカントの地理
  • MOTHER2:なぜ4人目はプーなのか? 〜ネスが背負うもの
  • MOTHER3:物語を終わらせる物語 〜リュカは何故金髪か?
  • MOTHER3:「混ざったもの」たちの世界、そして最後に

というわけで、MOTHERをプレイした事のある人は自分の感想と突き合わせて、プレイしたことの無い人は・・・少しでも興味を持ってもらえたら幸いです。素晴らしいゲームです!

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