
太古、洗面器は、少ない水でまんべんなく顔を洗えるようにするために設計された、と思う。昔は水が貴重だったのだ。でも僕が子供の頃になると、少ないお湯を保持するために使った。子供の頃の我が家には水道の蛇口はあったけど、湯沸かし器もシャワーも無かったから。ウチでは電気ポットのお湯を洗面器に注いで、水で程よい温度にぬるめてから顔を洗った。
シャワーからいつでもいくらでもお湯が出る現代、若い人にはそもそも洗面器の使い方が分からない人がいるかもしれない。もう僕も洗面器を使わないどころか、朝シャワーを浴びることが多いぐらいだ。
でも、実家の父は相変わらず洗面器だ。洗面所なんてウチには無いから、台所だ。冬の朝、台所のシンクの中から上がってくる真っ白くて眩しい湯気の中に体を倒している父親の姿は、見る度に懐かしいような、切ないような、不思議な感慨があるものだ。子供の頃の僕には、その姿はまるで雲の上から下界を覗き込む巨人のように見えた。
今日の写真
本当は洗面器か台所の写真を出そうかと思ったんですが、実家がバレちゃうのは恥ずかしいので、道ばたに放置されていたドラム缶に積もる雪の写真にしました。丸くて水が入るということで・・・。
そのせいで随分と季節ハズレの写真になってしまったんですけど、ここ数日の夕闇の風に混じる秋の気配を吸い込むにつけ、ああ冬が来るな、って思ったりもします。
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