
いきなりの話ですが、今回からシリーズで「MOTHER読解」と銘打った記事をスタートさせたいと思います。先日の記事『批評って面白い? 〜「崖の上のポニョが神すぎる件」を巡って』にも書きましたが、僕は批評やら読解やらが大好きなので、完全な趣味の記事となってます(笑)
以下、MOTHERシリーズのネタバレを含みます。
「ぼくだけのばしょ」のモチーフを読解する
僕が大好きなゲームに、任天堂のMOTHERシリーズがあります。糸井重里が作ったRPGで、他のRPGとは一線を画した世界観が大好きで、僕が音楽や文章を書く趣味を持つきっかけになったソフトといっても過言ではありません。そんなMOTHERシリーズの中から、今日はMOTHER2の「ぼくだけのばしょ」をとりあげます。旅の中で、主人公の少年は世界に散らばる「ぼくだけのばしょ」を辿ることで精神的に成長していくのですが、その場所は下記の8カ所があります。
- ジャイアントステップ:謎の大きな足跡
- リリパットステップ:一列になり輪を描いた小さな足跡
- ミルキーウェル:小さな岩から牛乳のような白い水が湧き出る泉
- レイニーサークル:一角だけ静かに雨が降り続く場所
- マグネットヒル:都会の片隅にあるキラキラした磁石のモニュメント
- ピンククラウド:洞窟の先の崖から広がるピンク色の雲
- ルミネホール:ヒカリゴケが主人公の心の中を文字にする洞窟
- ファイアスプリング:激しく炎を吹き上げる小さな火山
MOTHER2が発売されたのは1994年、まだ子供だった僕には分かりませんでしたが、今になって改めてプレイしてみると、この8カ所の「ぼくだけのばしょ」に込められたメッセージが理解できるような気がします。あくまで僕個人の読解でしかありませんが、こんな意味があるのだと感じました。
- ジャイアントステップ:誕生。偉大な一歩を世界に記す
- リリパットステップ:ハイハイ・よちよちで動き回る赤ちゃん
- ミルキーウェル:母のおっぱい。無償の愛を受ける
- レイニーサークル:うまくいかない事やさみしさに涙を流す悲しい心
- マグネットヒル:世界に転がっている様々な不思議に惹かれる好奇心
- ピンククラウド:淡く沸き立つ恋心(注・洞窟の入口はウサギの石像に塞がれている=バニーガール?)
- ルミネホール:自分という存在を見つめる。アイデンティティの芽生え
- ファイアスプリング:自我の噴出とアイデンティティの確立
主人公は世界を救うために、自分という存在に気付き、確立し、真の意味で大人になるという成長の物語であるということが、「ぼくだけのばしょ」から読み解ける訳です。なお、これら8カ所を訪れた時に、主人公のネスは一瞬だけ幻を見ます。下記がそのリストですが、この幻からも上記の意味が深く汲み取ってもらえるかと思います。
- ジャイアントステップ:『ネスの目に一瞬白いむく犬の姿が見えた。』
- リリパットステップ:『ネスは赤い帽子をかぶった赤ちゃんの幻を見た。』
- ミルキーウェル:『ネスは遠くにママの声がしたように思った。思いやりのある強い子に・・・と聞こえた。』
- レイニーサークル:『ネスは一瞬、好きな献立の匂いを感じた。』
- マグネットヒル:『ネスの目に一瞬、ほ乳ビンが見えた。』
- ピンククラウド:『ネスは、若いママを見たような気がした。』
- ルミネホール:『ネスは、自分を抱いているパパの幻を見た。』
- ファイアスプリング:『ネスは幼い頃の自分に見つめられているような気がした。』
主人公はこの幻を通じて、少年がさらに小さかった頃の無意識の記憶を辿っていきます。少し年上のむく犬と共に成長したこと、ハイハイしたこと、母の愛。泣きじゃくる少年を、夕げの匂いが慰めたこと。キラキラして透明な瓶を掴んだ小さな自分の手、美しい母の姿、頼もしく自分を抱え守る父、そしてそんな家族の愛を受けて生まれた自分。幼い頃の自分がまなざしで訴えかけるのは、きっと「主人公が生まれて来た理由」なのでしょう。お前はこうして生まれたのだ、愛されるために生まれたのだ、それこそがお前が存在する理由なのだ・・・と、少年は理解したのかもしれません。そして「愛されること」を理解することで、少年はやがて「愛すること」を手に入れるのかも、しれません。
そうして8カ所の「ぼくだけのばしょ」を訪れた主人公は、自分の心の世界「マジカント」を冒険し、記憶と対話し、内なる悪魔を打ち倒した後に、一瞬だけ宇宙の真理に触れることになるのですが・・・この後はゲームでお楽しみください。
ゲームの外箱に、こんな言葉があります。
このゲームをプレイすると、こどもはおとなに、おとなはこどもに、なっていきます。
この言葉は、まさにMOTHER2というゲームが「こどもがおとなになる」物語から成り立っていることの証左でしょう。その道のりを丁寧に丁寧になぞっているからこそ、逆におとながプレイすると「あー、俺ってこんなだったな」という風に『おとなはこどもに』なる、という往還なわけで、だからこそ8つの「ぼくだけのばしょ」には上記のようなモチーフが与えられる事になったのだと思います。いやはや、よく出来たゲームです。
ちなみに、この記事を書くきっかけにもなった動画がニコニコ動画にあります。MOTHERシリーズは楽曲の良さにも定評があり、その中からの極上のチョイスをアレンジメドレーで聴かせてくれる素晴らしい動画です。
今後のラインナップ
さて、今後も折に触れて「MOTHER読解」を公開しようと思っていて、今後予定されているラインナップはこちらになっております。
- MOTHER:恋に気付く方法 〜アナとピッピの居場所
- MOTHER:母という心性、マジカントの地理
- MOTHER2:なぜ4人目はプーなのか? 〜ネスが背負うもの
- MOTHER3:物語を終わらせる物語 〜リュカは何故金髪か?
- MOTHER3:「混ざったもの」たちの世界、そして最後に
というわけで、MOTHERをプレイした事のある人は自分の感想と突き合わせて、プレイしたことの無い人は・・・少しでも興味を持ってもらえたら幸いです。素晴らしいゲームです!
- Newer: リンク「たねブロ」
- Older: 透過PNGで見た目が(少しだけ)良くなりました




